「豚肉の品質と食味性について」—食肉産業展でセミナー開催




 食肉産業展で9日、独立行政法人家畜改良センターの入江正和理事長が「豚肉の品質と食味性について」をテーマに、講演を行った。要旨は以下のとおり。
 豚肉のおいしさと食味性はジューシーネス(多汁性)、テンダーネス(軟らかさなどの物性)、フレーバー(風味)が重要な指標となる。ジューシーネスとは、水分を多く含んでいるという意味ではなく、肉の保水性が重要であるということ。多汁性に劣る肉は、ドリップが多く「パサパサして硬い」食味に感じるためだ。また、ドリップだけでなく鍋に入れて食す際に、アクが出やすい肉も同様に、うまみや水分が流出しているということになる。これらの肉は枝肉の状態においても、淡い色でしまりが悪くPSE(ムレ肉)と呼ばれる。その反対にDFD(Dark Firm Dry)と呼ばれる肉もある。色味が濃く、乾いた感じで肉は締まっている豚肉のことで、保存性に劣るが味は良い。昔に比べてPSEは減っているとはいえ、中軽度のPSEは依然として発生しているため、豚肉の選定の際は肉質の特徴を理解しておく必要がある。次に、フレーバーだが「悪いにおい」がないことが重要だ。悪臭は、生体時点における要因が主である。具体的には雄性ホルモンやスカトール(不快なにおいを発する化合物)が脂肪に蓄積することで発生する。こうしたにおいに対して、とくに日本人は敏感であるため、注意する必要がある。一方、フレーバーについては熟成による、うまみ向上にも注目したい。北米産の豚肉は、輸送の際にウエットエージングを活用し品質を向上させている。
 科学的にみると、タンパク質は自己のもつ酵素で一部分解されて、ペプチドやアミノ酸になるとうまみを呈する。中でもグルタミン酸は昆布のうまみや化学調味料の成分としても有名だ。こうしたアミノ酸系のうまみ物質を増やすには長期熟成が非常に効果的である。また、脂質と食味性の関係については、飽和脂肪酸が多いと食感の滑らかさが低下することが分かっている。一方で、一価不飽和脂肪酸(バルミトレイン酸、オレイン酸)が多いと、舌触りが良くなり、遊離すると風味物質になる。また、脂肪の質には飼料が大きな影響をもたらすことが分かっている。脂肪味は第6の味と呼ばれており、とくに遊離オレイン酸は脂肪味を感じさせるだけでなく、甘味、うまみを感じさせ、脳においしいと思わせる効用があるため、近年、食肉全般で大きな注目を集めている。

※当ページに掲載している記事はいずれも日刊「食肉速報」からの抜粋です。詳細は本紙でお読みいただけます。 >>「食肉速報」を今すぐ申し込む



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