10月6日から全共・鹿児島県大会、脂質評価を大幅強化




 「和牛新時代 地域かがやく和牛力」をテーマに、第12回全国和牛能力共進会(主催=全国和牛登録協会)の最終比較審査が10月6〜10日の5日間、鹿児島県の霧島市牧園町(種牛の部)、南九州市知覧町(肉牛の部)で開かれる。同大会には全国41道府県から各地域予選で選抜された439頭が出場し、全9区それぞれの部門で和牛日本一の座をかけて真剣勝負が繰り広げられる。一方、「種牛の部」会場では、来場者が和牛の魅力を感じ、子供から大人まで楽しめるように多くのイベントを企画。期間中の入場者数は約40万〜50万人、周辺産業への影響も含めると100億円を超える経済効果が見込まれている。
 全国和牛能力共進会(全共)は、5年に1度、全国の優秀な和牛を集めて競うという、そのスケールの大きさから「和牛のオリンピック」とも称されている国内最大の畜産イベントである。次代の種雄牛候補や、繁殖雌牛の優れた遺伝的能力を審査する「種牛の部」と、枝肉の肉量や肉質、脂質を審査する「肉牛の部」に分かれる。また、今回から次代の和牛生産を担う学生を対象に特別区として「高校および農業大学校の部」を新設。前回は復興特別出品区として「高校の部」が設けられていたが、今回から農業大学校の学生も対象に広げ、正式な出品区となった。特別区では学校で生産・飼養した14〜20カ月齢未満の雌牛1頭を出品し、生体で審査するとともに、事前に提出された日ごろの実習や取り組みを記した報告書の総合点を競う。
 今大会のテーマは「和牛新時代 地域かがやく和牛力」。世界的に和牛の肉質や味への評価が高まる一方で、国内の消費者のし好も時代とともに変わってきた。育種価の改良と飼養技術の向上で、脂肪交雑については飛躍的な進歩が遂げられたが、同時にサシの美しさだけではない新たな評価基準を求める声も高まっている。そのため、今回から新たに「脂肪の質」を評価する出品区を新設。オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸(MUFA)の予測値を計測して評価する。それに加えて、肉牛の部の枝肉審査の項目も「脂肪の質」は、肉量・肉質と同割合で採点されることになり、枝肉評価基準として脂質が大幅に強化された。近年、オレイン酸含有量を銘柄の規格基準に設定したブランド牛も出てきているが、新たな基準で「おいしさ」を評価することで、サシ一辺倒ではない今後の和牛改良の方向性を示しているといえるだろう。
 種牛と肉牛の双方を評価し、和牛生産県としての総合力が試される第6区(総合評価群)では、出品牛の父・母牛を「自道府県産」に限定していることも大きな変更点。一部の種雄牛に人気が集中する現状を是正し、遺伝的多様性を維持・拡大する方針を改めて打ち出した形だ。また、肉牛の部においては、今回は10月開催のため、通常の市場出荷の平均月齢より大幅に若い24カ月齢未満という厳しいレギュレーション。食い込みの落ちる真夏に仕上げ期を迎えなくて良い分、前回大会を上回る仕上がりの枝肉がそろうことが期待される。一方で南端の鹿児島開催のため、北海道・東日本の出品牛は長距離輸送の影響を最小限に抑えるための、細心の注意が求められるだろう。

※当ページに掲載している記事はいずれも日刊「食肉速報」からの抜粋です。詳細は本紙でお読みいただけます。 >>「食肉速報」を今すぐ申し込む



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